人を知る

私が所属する研究開発部は、新製品の開発が主な仕事です。この業務には処方開発から試験法の設定、安定性の評価、実生産への技術移転といった一連の流れがあるわけですが、私は主に処方開発から初期の安定性評価を担当しています。
具体的には製品コンセプトからコアとなる部分を選定し、良好な成分の安定性と使用感の両立を目標に製剤を組み立て、評価→改良→評価…を繰り返して正式な処方にブラッシュアップしていく、という仕事です。

痔をはじめとするお尻のトラブル、健康上のトラブルといったことは、なかなか他の人には相談しにくく、ひとりで悩まれる患者様も少なくありません。だからこそ、「こんなお悩みがあるのではないか」「こうすればもっと手に取りやすくなるのでは」と、できる限り患者様の立場にたち、想像したうえで、製品の開発に取り組んでいます。

技術者というものは往々にして難しい技術を詰め込んだものを作りたいと思ってしまうことがあるのですが（笑）、いくら優れた技術を製品に付与しても、その技術が患者様のメリット、ベネフィットに繋がらないと意味はありません。常に患者様、ユーザーの方に有益であることを最優先に、業務に取り組むことを心がけています。

これまでに一番うれしかったのは、市場になかったタイプの製品を自らイチから作り上げ、最終的な製品化にまで至ったことです。剤型と包装形態の相性があまり良くなく、それまでにも何度か断念していた題材だったのですが、製品のコンセプトマターにおける「譲れない部分」をしっかりと守りながら、これまでの経験をフル活用して処方・製法開発を繰り返し検証し、ようやく実生産にこぎつけることができました。
この時に活用した経験や知見は、それまでなかなか形にすることができず、悔しい思いをしてきたものが多かったので、その製品でようやく活かすことができたときは、「これまでの時間は無駄ではなかったんだ」と実感できてうれしかったですね。

やはり大切なのは、どんな時にもベストを尽くす、ということだと思います。製品開発という仕事は、自分がどれだけ作り込めるかによって製品のポテンシャルが決まる、と言っても過言ではありません。使用する成分の種類や量、配合順序など数多くの選択肢の中、時には「こちらを選べば楽だろうな」という妥協の誘惑に駆られることもあります。そんな時は、患者様を思い浮かべ、その方にベストな選択肢を本当に選んでいるか、ということを意識するようにしています。

「ボラギノール®を超えるボラギノール®」の製品化です。業界トップシェアになって久しいボラギノール®ですが、今の製品がベストであり続けるとは言い切れません。そんな日に備え、常に製品改良に励んでいます。
天藤製薬は、本当に良いと確信できるものしか世に出しません。このモノづくりに対する真摯さ、誠実さはこれからもしっかりと守っていきます。だからこそ、新製品の企画も中途半端な妥協案は出さず、常にベストを尽くす。既存品であっても、ユーザーからの要望があれば、何とかできないかと現場で頭を悩ませます（笑）。
「痔疾用薬のリーディングカンパニー」という立ち位置に慢心せず、常に自分たちに何ができるのかを考え続けたいと思います。

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